日本機械学会 2011年度
機械遺産認定のお知らせ

平成23年7月25日

日本機械学会による2011年度機械遺産として、当社長野工場で保存している「多能式自動券売機」が認定されました。以下、その概要をお知らせ致します。

1.概要

世界初の「多能式自動券売機」は、旧株式会社髙見澤電機製作所自販機事業部(現株式会社高見沢サイバネティックス)にて、1962(昭和37)年に開発されました。多能式とは、印刷機構を備えて、発売のたびにロール紙に運賃等を印刷する方式であり、この方式により複数券種の乗車券が初めて自動券売機で発売できるようになりました。

今回機械遺産として認定された自動券売機は、世界初の多能式技術をベースに量産化されたモデルであり、現存し稼動する最古の「多能式自動券売機」です。制御部は、およそ250個のリレーにより構成されており、独創的な機械式硬貨処理機構により、各種硬貨の選別・蓄積・釣銭払出し機能だけでなく、さらに擬似硬貨検出機能も備えています。

本機は、1969(昭和44)年に製造され、1970(昭和45)年に万国博覧会場の北大阪急行電鉄株式会社様万国博中央口駅に設置されました。その後、浴場の入場券発売機として使用されていましたが、使用終了後当社が引き取り、当時と同様に稼動できる状態で保存・展示しています。

自動券売機の内部機構

現在、多能式自動券売機は鉄道に限らず多方面で活躍しています。本機はその歴史的意義とともに、その後の鉄道各社の駅等の自動券売機として普及していく契機となったもので、機械技術の独創性と優秀さを示す遺産として誇れる製品です。

今回の認定を機会に、当社の長野第3工場(技術棟)にて一般公開(無料:事前予約制)予定です。

2.概略仕様 型式VTAC-CS1

制御部
制御方式
リレー式制御
リレー個数
250個
硬貨処理部
使用可能硬貨
5円、10円、50円、100円
釣銭硬貨
5円、10円、50円、100円
券印刷処理部
ゴム印判
墨インク式印刷(20種類の券を印刷可能)
ロール紙
1巻

3.多能式券売機の主な歴史(黎明期)

年月 内容
1962年
(昭和37年)
第1号機開発(旧株式会社髙見澤電機製作所)
その後、改良ならび試行運用
1965年
(昭和40年)
関東地方の私鉄各社で導入開始
1967年
(昭和42年)
近畿・中部地方の私鉄各社で導入開始
1968年
(昭和43年)
旧日本国有鉄道で導入開始
(43年10月「ヨンサントウ」ダイヤ改正)

4.北大阪急行電鉄株式会社様 万国博中央口駅設置写真

北大阪急行電鉄株式会社様 万国博中央口駅設置写真

参考資料

参考資料

機械遺産について
日本機械学会が2007年6月に創立110周年を迎えたことによる記念事業の一環として、毎年、歴史に残る機械技術関連遺産を大切に保存し、文化的遺産として次世代に伝えることを目的に、日本国内の機械技術面で歴史的意義のある「機械遺産」(Mechanical Engineering Heritage)の認定が行われています。上記「多能式券売機」は2011年度機械遺産全7件のうちの一つとして選定されたものです。